可聴周波数によるSWR計のリモート化2015年04月01日 09:01

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Rigをリモートコントロールしていると時々アンテナのSWRの最低周波数が動いていることがあります。以前EHアンテナを使っていたときは晴れの日と雨の日で60kHz(at7MHz)くらい平気で動きました。手元にSWRメータがあったときはそれを見て対処できました。RIgを遠くに(と言っても隣の部屋ですが)置いてからはいったい今アンテナはどうなっているのか全く分かりません。その都度SWRを見に行くのも煩わしいのでリモートで見れるようにしました。今現用のアンテナの内50MHz、144MHz、435MHzはバンド内1.0(最低ということ)で何も考えずに運用できます。そこでHF専用に作成します。

リモート化の基本的な考え方ですが、通常はCM形方向性結合器の出力である進行波と反射波をそれぞれ読み演算してSWRを計算します。(参考サイト:CM形方向性結合器の動作原理)ダイオードによる加減算でもいいのですがリニアリティーの問題があります。そこでAD社のログアンプAD8307を使います。リニア域は80dBもあります。(参考サイト:ここ

ここではセンサーの出力をログアンプで電圧に変換し、オペアンプでリターンロスを演算させ進行波(パワー)とリターンロス(反射電力比)のそれぞれを電圧として出力します。この電圧でメーターを振らせます。この電圧から低周波(300Hzから4KHz)に変換(VF変換)します。この可聴周波数をBluetoothのRとLのラインに入力します。パソコン側ではBluetoothのドングルを付け取り込みます。取り込んだ可聴周波数をFFT変換し周波数を読み出しパワー値に変換します。

このVF変換の出力はサイン波のほかに矩形波も考えられます。これはデジタルパルスですので例えばRS422などで長距離伝送できます。必要ならFV変換してそれをAD変換すれば電圧を取れます。
AD変換しなくても周波数カウンターでパルスを計数し変換すればそのままパワー値となります。

Bluetoothでなくオーディオ平衡伝送を使い長距離に伝送しそれをPCのオーディオ入力に入れ、後はFFT変換すればパワーが分かります。AD変換やFFT変換しなくとも耳で聞いて周波数からパワー値とリターンロスの大体の値は把握できるかも知れません。(もちろんRだけ、Lだけにして聞きます)人間FFTですね。

ここではBluetoothでなくFMトランスミッターを使います。この方が長距離に通信できるからです。但しパソコン側は工夫が必要です。FMラジオの出力をパソコンのライン入力に入れるか、またはUSB FMラジオを使います。Bluetoothは2.4G帯で無線LANとかぶります。距離も数mです。

VF変換をアナログで行うにはNJM4151などが入手しやすいのですが矩形波のみです。サイン波出力でかつ入力電圧に応じて周波数を変えれるICはファンクションジェネレータのICです。ICL8038 というものが大昔ありました。その後MAX038などがありましたが今は見なくなりました。XR2206がかろうじて入手できるかも知れないICです。最近はDDSやらPWMコントローラICやら便利で高安定なICがありそちらに移っているのでしょうか。
そこでXR2206を2個使いパワー値とリターンロスを変換します。つまりすべてアナログで処理するということです。

SWR計は参考にしたサイトはhttp://lowreal.net/2014/11/11/1です。ここに参考サイトとしてhttp://n2pk.com/RLPmtr/RLPv1c.pdf が乗っていました。手持ち部品で大体揃うのでこれを原典とし、コピーします。(このサイトの5ページが回路図です。)
このN2PKさんはVNAがWEBで沢山ヒットします。今回のPwerMeter&RLMeterは結構マニアックで作りこみは職人です。参考にした回路の作りこみの写真です。(http://n2pk.com/ より)

回路的に日本では入手困難な部品があります。RG-8Xという同軸ケーブルです。センサー部の中にRG-8Xを25mm使い1.5P~2.5Pの可変コンデンサーにしています。Fig9のC1の部分です。

RG-8Xを手持ちのRG-58A/Uに置き換えたいと考えましたが仕様によれば容量が25mmでRG-8Xは2PでRG-58A/Uは2.38Pになります。2Pにするには21mmの長さです。
このブリッジのバランスは下記のように記されています。

方向性結合器の概念図が載ってます。Fig5です。
R3'は11.5Ωと2.2k(1.1+1.1)の並列ですから11.44Ωです。先ほどの式に代入します。
Fig5のC2はFig9のC2’、C3'、C4'、C5'、C6'の合計値です。(Fig9のコンデンサは’を付けて表しています。)


                 C2=C2'(100)+C3'(100)+C4'(100)+C5'(82)+C6'(5)=387

                  C1/(C1+387) = 11.44 /(2×50×22) = 0.0052 

              ∴C1 = 2.02P

C1が2.3Pだと左辺が0.0059です。これでバランスさせるにはC2は440Pになります。これはC1の調整がかなりシビアだと言うことです。C1'が1.5~2.5ですから神業でC1を決める必要があります。
さらにC5'がプリント基板の裏と表を使って40mm×31mmのコンデンサを作っています。これで82Pとしていますが基板厚が0.031inch(0.78mm)を使っています。今回使うのは1.6mmですからC5'の82Pは40.4Pになります(誘電率が同じとして)。
そこで固定コンデンサ(チップコン100P3個)にさらに47Pを加えます。C6'を4~20Pのものを使うとC1=2.08P、C2=397.92Pでバランスします。
実際の回路では

      397.92=C2'(100)+C3'(100)+C4'(100)+追加C4'(47)+C5’(40.4)+C6'(10.52)

とします。これでつじつまが合う予定です。
従ってC1はRG-58A/Uを外部導体を25mmとし21.6mmくらい中心導体を押し込みます。その後は微調整します。
念のためと思いCの容量を測定しました。KEMのKEM-FRA-V3.0というソフトで既知のコンデンサを使いC2(387P)を追加してどのくらい周波数が変わるか見て計算します。


結果は356.3pになりました。後から追加した47Pがうまく繋がっていないか、またはプリント基板のコンデンサの見込み容量が違っていたかです。そこでさらに33Pを追加しました。

        C2 = C2'+C3'+C4'+追加C4'+C5’+C6'+さらに追加C4'(33)=389.3

チップコンの100P3個と47PはSMDでなくても良いのですが基板に穴を開けてそこに詰め込むと最短距離でスマートに実装できます。うまいこと考えたものです。基板をコンデンサにすることといい、またC6を同軸を使用し高耐圧でかつバリアブルなコンデンサといいこの人はすばらしいアイデアマンですね。秋月電子の47Pチップコンデンサはφ1の穴にぴったり埋まりました。チップコンデンサでなく普通のコンデンサでも構いません調整のところでも詳しく述べます。
C6の同軸を使ったバリアブルコンデンサですが外部導体に銅テープを巻いてハンダ付けしました。

基板の部品面です。

裏面です。こちら側に検出コイルT1が付きます。

検出コイルT50-3を使ったT1です。被服があるほうが基板を突き抜け部品面にでます。

BNCコネクタを取り付けた銅版を基板にハンダ付けしT1と接続します上図の左下にC1の同軸が写っています。下の図の右上です。このように基板を突きぬけます。T1コイル側は周りのグランドに接触しないように穴の周りを削ります。

原典ではICをひっくり返して実装しています。ICのピンを切り最短で結んでいます。今回は表向きでやはりICのピンを切り原典とおなじように空中配線します。
検出部は原典にはありませんがおまじないでシールドします。

部品面の後ろを切り落とします。

これで検出部からRL演算部まで完成です。

こちらもシールドします。
電源部は24Vを送電し電源部で12V,5V.2.8Vを作成します。2.8Vは秋月電子のFMトランスミッター用です。

写真の左から7812、7805、2933です。L型の5mm厚のアルミ板を放熱板代わりにします。L型の下は筐体に直付けします。

ICソケットが1個だけ載っている基板はXR2206用の基板です。




これで検出部とRL演算部は完成しました。
FM変調部も中に組み込み設置しました。アンテナ直下にあります。



回路図です。





調整とFM変調は次回。

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